Blenderの歴史を振り返ってみる

Blender

今日Blenderは3DCGソフトの代名詞になり、数多の企業が制作ソフトに採用し今も大規模なアップデートが行われるオープンソースです。

Blenderを紹介するにあたり歴史を振り返ってみようと思う。

オランダのTon RoosendaalがアニメスタジオNeoGeoで社内ツールとしてBlenderの原型を開発。のちに商用会社Not a Number (NaN)を設立し、一般向けにBlenderを配布。

管理人

スーパーファミコンが1990年に発売、1994年にPS1、セガサターンが発売。1993年にアーケードにバーチャファイターが導入され、3DCGゲームとして爆発的に売れた。当時はCGとは呼ばずポリゴンという呼び方が一般的に呼ばれ始めたはず。

NaNの経営難を受け、Blender Foundationが10万ユーロのクラウドファンディングに成功→GPLでソース公開。コミュニティ主導の現在の体制が始まる。

管理人

日本ではPS2が2000年に発売、2002年にはモンスターズインクが上映され、ファーの表現に度肝を抜かれた。CGWOLRDにもファーがどう再現されたのか特集されてたと思う。
2001年までMAYAは買い切りで100万円超え、2002年には26万円まで値下げされた。素人には一切手が出せない値段だった。

Blenderは“オープンムービー”を連発し、機能強化と実戦検証を両立する独自の開発サイクルを確立。
代表作:
Elephants Dream (2006) — 世界初の“オープンムービー”。Blenderの存在を広く知らしめる。
Big Buck Bunny (2008) — カートゥーン調レンダリングとファー表現が話題に。
Sintel (2010) — 2.5系の大規模UI刷新を押し進めた長編ショート。
Tears of Steel (2012) — 実写合成・トラッキング・マスキングなどVFX機能を強化。

管理人

Big Buck Bunny。この時はソフトが無料と知らなくて普通に見てたが無料と知って度肝抜かれた。
ただ扱いにくいでしょうということでMAYA、MAXが世界のスタンダードもあり、使ってみようと話題にも上がらなかった。
その背景には「無料」ということは収益がないから、いつまで続くか分からない、情報が乏しい、会社にノウハウがないので参入しにくいというのがあったと思う。

物理ベースのパストレーサーCyclesが標準に。高品質レンダの土台に。

管理人

このバージョンくらいから徐々にモデリング系の投稿が増えてきて、モデリングはBlenderでもいけるかもと感じ始めた。

Blender 2.80(2019年7月)でUI刷新、PBRビューポート&Eevee(リアルタイム)、Grease Pencil 2Dを実装。学習コストと制作速度が一気に改善。

代表作:
Hero (2018) — Grease Pencil 2Dのショーケース。2D×3Dの新ワークフローが分かりやすい。
Spring (2019) — 森のファンタジー短編。最終はCyclesでレンダ(Eeveeとの比較検証記事も)。

管理人

このHEROで2Dも出来ちゃうの?ってなり、3Dでアニメーション制作し、2Dエフェクト載せれる、ラフコンテもいけそう、なにより2Dアニメーションスタジオも注目する結果に。2Dを3D空間に配置出来るのも素晴らしい。
Springはもうこれでいいじゃん、ってくらいに進化を遂げた。
突き詰めればまだまだにしても表現としては小規模では十分実用的に感じる。

ノードでモデリングやプロシージャル化を行うGeometry Nodesが本格稼働。アセット化・パイプラインの自動化が加速。ドキュメントも継続更新。

代表作:
Sprite Fright (2021) — スタイライズ表現を突き詰めたオープンムービー。内部ブログでGeometry Nodesを使った投影メッシュ等の制作ノウハウが公開。

管理人

スタイライズは独自でプラグイン、ツールを開発してMAYAなどに組み込みジオメトリなど変形、アニメーションさせたり1フレーム単位での調整が必要だが、それをBlender1つで完結できるのは凄い。

Blender 4.2 LTS(2024年7月16日)公開。2年間の長期サポートでプロダクション運用が安定。Eevee次世代化やCyclesの改良など、4.x系で継続強化。

なんと全編Blenderで制作された「Flow」がアカデミー賞長編アニメーション賞を受賞するなど話題に。

管理人

ここからは皆さんがご承知の通り快進撃を続けています。
Ver.4になるとUIも一新され、他のDCCツールからも参入しやすくなりました。2023年にはエヴァンゲリオン制作で有名な株式会社スタジオカラーがBlenderをメインにしてくと発表することで注目を浴びる。

Blenderは最近出てきたソフトではなく意外にも1989年が最初で歴史は古いです。
今ではスポンサーや寄付で運営費を賄っています。2025年時点ではまだ赤字のようですが、スタンスは変えることなくこれからも寄付で運営するとのことです。(詳しく追記しました)

完全にBlender1本で作品を制作するには使用料は0円で財布には優しいし、興味のある方、初心者にも参入しやすく可能性を十分に感じます。
ただ会社単位でみるとラーニングコストが高くノウハウが蓄積されてないということもあり躊躇される現状もまだまだありますが、Blenderを使ってフリーで活躍されてる方を中心に集めMV制作されてる会社さんもあり、ゲーム会社では途中までで完結出来るモデリングではBlenderが使われることは増えています。

ただ良いことだけではなく、大規模な製作にはまだまだ向いてない印象があり、USD実装、パイプラインの構築、セキュリティの課題は大きいです。
しかし1つ1つの機能は使えるレベルにあり、モデリング、トラッキングなどは他のソフトに取って代わってきています。

現在、MAYA、MAXを筆頭にHoudiniもシミュレーション、モデファイヤだけでなくアニメーションにも力を入れ始め、それに加えてUnrealEngine、Uniryなどサードパーティも充実しており、ゲームにしても映画にしてもソフトをまたいだ親和性もキーになってきそうです。

選べるソフトが増えることは良いことで、切磋琢磨、価格競争、技術改革など良い意味での競争が激化するのを楽しみにしています。
買収だけはNoでお願いします…(追記:株式がない、GPLなので買収はされませんが)

Blender:
https://www.blender.org/

Blender寄付はこちら:
https://fund.blender.org/?utm_medium=www-footer


追記(2025/10/22)

収支についてBlenderFoundationの発表したPDFを元にもう少し詳しくまとめてみました。

2022→2024 主要指標の比較(要点)

指標202220232024
収入合計€2.170M€2.553M(概数)€3.106M
人件費+助成€1.316M(合算)€2.079M€2.713M
期末の状態均衡黒字小幅赤字(予約 –€73,853)

2022年次報告書
https://download.blender.org/foundation/Blender-Foundation-Annual-Report-2022.pdf

2023年次報告書
https://download.blender.org/foundation/Blender-Foundation-Annual-Report-2023.pdf

2024年次報告書
https://download.blender.org/foundation/Blender-Foundation-Annual-Report-2024.pdf

2024年時点では開発費、雇用人件費が収入を超えていて1300万程の赤字。ただこれには2024年末に実施した2%キャンペーンが含まれておらず2025年に持ち越すとのことです。


ですので1年赤字だからと言ってネガティブ要素というわけではなく、経営的にも今は前衛的に開発、人件費にお金をかけていく方針でより良いソフトを作り続けてサポーターが増えればこれまでの黒字を大幅更新して、新たにより良い開発、人材が集まる良い循環を生む為の先行投資と思います。

また寄付に関しては法人支援の拡大と小口寄付の裾野拡大を掲げており2024年の収支内訳はこのようになっています。

2024年 項目金額構成比
Epic MegaGrant(エピック・メガグラント)€87,5404%
開発基金—パトロン(最上位スポンサー)€1,073,68449%
開発基金—企業スポンサー€218,00010%
開発基金—個人寄付€423,83720%
Blender Market(マーケット収入)€155,6737%
Google Summer of Code(助成)€2,0030%
その他の大口寄付€160,8197%
暗号資産寄付の換金€00%
小口寄付€48,6942%
合計€2,170,250100%

これを見ての通りほぼ寄付で賄っているのが分かります。
皆さんに関係がありそうな個人の寄付が影響ないかと言えばそうでもなく、全体の20%にも及びますので寄付を考えていていたけれど躊躇されてた方はこれを機に寄付をしてくださると公式も大変喜ばれると思います。

また気になることがあれば追記します。

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